遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
臨床経験
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)プレカウンセリング後に遺伝学的検査を希望しなかったケースのフォローアップ
内田 恵小林 貴代石川 泰
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 23 巻 1 号 p. 44-49

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抄録

 兵庫県立加古川医療センターでは,遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer syndrome;HBOC)が疑われる乳癌患者に対して2015年より遺伝カウンセリング(genetic counceling;GC)外来を設置し,HBOCプレカウンセリングを経てGC,遺伝学的検査(genetic test;GT)を実施している.今回,GTを希望しなかった患者が後の検査で病的バリアントを認めた経験から,私達はフォローアップの重要性を再認識した.そこで,GTを希望しなかった患者の背景とフォローの状況を調査し,プレカウンセリング後のフォローアップについて検討した.GTの意向を保留または拒否した患者は88%で,その理由は心理的負担,血縁者への影響,経済的負担の順に多かった.実際にフォローを行ったのは9名で,フォローのきっかけは事前の意向確認の約束と遺伝以外の相談であった.プレカウンセリング後のフォローアップは施設で方針や基準を定め,遺伝性腫瘍コーディネーター(Hereditary Tumor Coordinator;HTC)のような乳癌診療と遺伝医療との間をつなぐ人材が施設内外の連携の一助を担うことが有用であると考えられた.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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