遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
乳頭温存乳房全切除術施行15年後に温存乳頭直下に乳癌を生じたBRCA2病的バリアントを有する乳癌の1例
山下 美智子坂川 太一新山 賢二田口 加奈亀井 義明藤本 悦子尾崎 依里奈江口 真理子
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2023 年 23 巻 1 号 p. 38-43

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抄録

 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and overian cancer syndrome;HBOC)の患者において乳頭温存乳房全切除術(nipple-sparing mastectomy;NSM)は標準的に実施されている.今回われわれは,NSM後の乳頭乳輪部に乳癌を生じたHBOCの1例を経験したため報告する.症例は49歳,女性.33歳時に左乳癌にてNSM+腋窩郭清を行い,切除断端は陰性であった.43歳時に右乳癌にて手術を施行した.49歳時に左乳頭直下に腫瘤を自覚され受診した.摘出生検にて左乳癌と診断した後, 左乳頭乳輪を含めた全切除術を施行した.術後に遺伝学的検査を施行し,BRCA2にc.9076C>T(p.Gln3026*)の病的バリアントを認めた.

 HBOC患者における治療的NSMの報告は少ないが,これまでに乳頭乳輪部の再発の報告はない.また,いずれの報告も観察期間が2~5年と短く,HBOCでは本症例のように術後長期間を経た後に乳癌を発症する可能性があり,長期的な症例の蓄積が必要と考えられる.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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