2024 年 24 巻 2 号 p. 153-160
Li-Fraumeni症候群(LFS)は,がん抑制遺伝子TP53の生殖細胞系列病的バリアントを原因とする遺伝性腫瘍とされ,閉経前乳癌がコア腫瘍の1つにある.NCCNガイドラインでは,年1回の乳房MRI検査とマンモグラフィによるサーベイランスが推奨され,また,乳癌未発症者に対する両側リスク低減乳房切除術は十分な遺伝カウンセリングを重ねたうえでの施行を検討することが提唱されている.LFSは従来,古典的診断基準やChompret基準の該当者に対して単一遺伝学的検査で診断されてきた.近年,米国を中心に多遺伝子パネル検査の普及に伴い,従来と異なる臨床像を有するLFSの存在が明らかになりつつある.われわれは多遺伝子パネル検査で発端者の診断に至ったLFS家系の癌未発症血縁者に対して,初回乳房サーベイランスで両側乳癌の診断に至った症例を経験した.また,LFSにおける乳癌の臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的に,当科で乳癌治療を施行した本症例含むLFS 5例の臨床病理学的因子と診断基準とのコンコーダンスを検証した.