少雨が続いた2005年の香川県馬宿川流域で観測された降水量100mmを超える2回の大雨によって生じた,降雨イベント発生時から約60日後までの長期的な渓流水質変化について考察した.特に硫化物イオンは特徴的な変化を示し,洪水終了後,もとの渓流水濃度レベルまで回復するのに1ヶ月以上要した.雨水流出高は流量ピーク後10日程度で降雨イベント前のレベルに戻った.これらのことから地下水流出成分の濃度形成に重要な役割を担うと考えられる基質からの物質溶出速度の大きさがうかがわれた.また珪酸についても洪水後の長期間,濃度レベルが高い状態が観測された.これは,洪水時に発生する表面流出によって引き起こされる土砂流出が原因と考えられる.