主催: 水文・水資源学会
本研究では,流域を構成する基本的な地形単位である谷頭部斜面と谷壁斜面,それらを含む2?5次谷流域における観測結果を比較し,流域スケールと流出特性の関係を把握することを目的とした.観測の結果,基底流出時において,谷頭部斜面の流出量は,5次谷流域に比べて大きく,また,谷壁斜面は小さい傾向を示した.また, 2?5次谷流域の流出特性に差は認められなかった.この結果とSiO2濃度の空間分布の結果を併せて考えると,基底流出時の流出特性には,基岩を通過した水(岩盤地下水)が重要な役割を果たしていることが明らかになった.洪水流出時には,谷頭部斜面,谷壁斜面の降雨流出応答は降雨の規模によって異なり,また,2?5次谷流域の流出応答に影響を与えていることが示された.一方,2?5次谷流域では,流出特性に差が見られず,斜面地形の影響が平均化されていることが示唆された.