首都圏に隣接する東京湾は,海陸風循環という形でヒートアイランド現象や集中豪雨といった都市大気環境問題に影響を及ぼしていることが指摘されているが,海陸風循環の駆動力となる海表面温度の時間スケールの短い変動傾向については,詳細には理解されていない.そこで本研究では,約1年間に渡って,東京湾の海表面温度および海上気温の直接多点観測を実施した.日較差に着目した結果,東京湾は,湾奥ほど浅く熱容量が小さいことから,年間を通じて湾奥ほど日変化(日較差)が大きく,その傾向は夏季ほど強いことが示された.なお,降雨がある場合は,季節を問わず,湾内全域で日較差はほぼ一定となるが,降雨がない場合は日射強制力に依存した季節変動を示す.また,日較差は風速にも依存し,夏季の晴れた日は風速が弱いほど日較差が大きくなる(約2.2℃)ことが示された.