主催: 水文・水資源学会
中央アジアのアラル盆地のように、水収支を大きく変化させて大規模農地を開拓してきた地域にとって、今後の水資源の変化は地域発達に最も影響を及ぼす要素の一つである。当該地においては、二十世紀後半以降の大規模な灌漑用水路の発達により、アラル海の縮小や周辺地域の気候変化などが引き起こされたとされている。本研究では、アラル盆地において、大陸規模での気候変動および灌漑用水路の発達が複合的にもたらす蒸発散の変化について着目し、定量的に解析を行った。蒸発散の算出はアラル海を中心とした閉じた水系を考慮する事で可能となった。水文学的陸面モデルの解析結果から、解析対象地域においては、灌漑用水路の発達が蒸発散の上昇を引き起こし、増加した蒸発散量によって灌漑地域は周辺地域よりも気温上昇が抑えられている事がわかった。