抄録
近年,降水量の変化,気温上昇などの気象変化が顕著になっており,その影響が水質環境に影響を及ぼす可能性が示唆されている.この気象変化は,風に対しても生じる可能性があり,例えば強風の発生頻度の変化が考えられる.東京湾は閉鎖性内湾であり成層が発達し易く,鉛直方向の物質輸送が抑制されることで,底層付近に貧酸素水塊が発生し易い状態にある.そこで,本研究ではMRI-AGCM3.1S, MRI-AGCM3.1H, MRI-AGCM3.1LとCMIP3の8つのモデルの将来予測値を利用することで,地球規模での環境変動の影響により,東京湾のDO 濃度回復に大きな効果のある南西風(KEw)にどのような影響を与えるか評価を行うため,将来東京湾で発生する風の発生傾向の変化について検討することを目的とする.その結果,DO 濃度回復に大きな効果のある100 m2/s2以上のKEwが発生する日数の増加はMRI-AGCM3.1Sのみで生じており,その他のモデルでは現在と将来でKEwの発生回数に大きな変化がないことが分かった.