抄録
温暖化の影響評価や適応策を考える際には幅広い範囲の排出シナリオの結果が必要となる。大気大循環モデルを用いて様々な排出シナリオの条件下で予測を行うには膨大な計算機資源が必要となる。パターンスケーリングは、このような幅広い排出シナリオに基づいた将来予測を行うために非常に有益なツールである。パターンスケーリングにおいては、簡易気候モデルが大気大循環モデルの全球平均気温上昇量を模倣する性能が持つことが求められる。そこで、本研究では、AIM/impact/policy簡易気候モデルがどの程度MIROC5の結果を再現できるかを調べた。過去の研究から、平衡気候感度、海洋の熱吸収、エアロゾルの放射強制力が重要であることが指摘されている。そこで、本研究では、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて、それらのパラメーターを推定した。初期設定とMCMCにより推定されたパラメーターでは、気候感度や人為起源エアロゾルの放射強制力はそれほど違わない。一方、応答関数の係数については違いが大きい。その結果、初期設定では、MIROC5より昇温量が小さかったが、MCMCによって推定された応答関数では、海洋の熱吸収が少なくなり、昇温量がMIROC5に近づいている。その結果、2100年の差が、初期設定では-0.60であったが、MCMCで推定されたパラメーターを用いた場合、0.10と大幅に減少している。