抄録
本論文は、知的障害者通所施設に在籍する一自閉症青年の行動障害の改善への取り組みである。介入に先立つ施設での取り組みとして、まず生態学的調査(家庭での生活範囲や生活スケジュールの調査)と施設内で自由に活動してもらい好みのものや活動、コミュニケーション能力などの行動観察を行った。その結果、好みの活動は洗剤や新聞の折り込み広告を見る、おやつを食べたりお茶を飲むこと、コミュニケーションの伝達方法としては文字が有効であることが明らかとなった。そこで、施設内で作業と好みの活動を交互に組み込んだ一日のスケジュールを作成し、更に生活環境を整えるといった支援を設定した。その結果、対象者の行動障害の多くが徐々に改善していった。しかしながら、自傷行動が残存したので、機能アセスメントに基づきこだわり行動の代替行動の形成を試みた。その形成に伴って、強度の自傷が改善された。また、同じ時期に家庭においても行動障害の改善が見られ、生活の幅が広がった。