水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2016年度研究発表会
セッションID: P73
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【水文統計】
固有直交分解を用いた洪水氾濫モデルの縮約に関する研究
*友田 成美
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抄録

現在の洪水氾濫計算は、対象領域を多数の格子に区切りその領域の水理量を計算 するという構造になっているが、その格子の大きさは、流れの構造を適切に表現で きる程度になっていなければならず、格子の数が増えれば増えるほど計算コストが 大きくなってしまうという問題がある。 本研究では、この計算時間の短縮を目的とし、従来の氾濫計算モデルに固有直交 分解を適用することで計算の次元を低減させた縮約モデルを提案した。氾濫解析の基礎式として1次元局所慣性方程式を用いた。水深と単位幅流量に固有直交分解を適用し、比較的少ない数の支配的な基底とその係数の線形結合によって表現することで、水深と単位幅流量そのものの間変化ではなく、基底の係数の時間変化を求める。水深と単位幅流量の値は基底と係数の値から復元する。固有直交分解を適用するにあたり、基礎式が水深と単位幅流量に関して線形である必要があるため、非線形項にTaylor展開を適用して線形化した。 この縮約モデルを長さ1000mの1次元の領域に適用した。この領域を100個のセルに分割した。従って縮約前のモデルの計算の次元は各セルにおける水深の数100と各セルの境界における単位幅流量の数101の和、すなわち201である。一方縮約モデルでは水深と単位幅流量をそれぞれ10個ずつの基底で表現したため、計算の次元は20と、大幅に減少した。 この縮約モデルにより氾濫計算を行ったところ、縮約前のモデルによって得られた結果を非常によく再現する結果が得られた。また、計算に用いる基底の数と線形化を行う回数を少なくすればするほど計算時間が短くなることを明らかにした。  

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