水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2017年度研究発表会
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【河川・湖沼・地下水】9月21日(木)10:40~12:10
河川流量の逓減特性を用いた流域スケール透水係数の推定手法に関する研究
阪田 義隆*濱原 能成*丸井 敦尚
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p. 43-

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抄録

本研究では,水循環を評価する指標あるいはシミュレーションの初期値としての領域スケールでの平均的な透水係数を求める手法として,河川の逓減解析に着目する.降雨後一定期間を経過した後の河川流量の逓減過程は,その上流全体の河川への地下水流出に係わる表層付近の平均的な透水性を反映し,水循環分析に必要な透水性に相当すると考えられる.逓減特性から流域の透水係数を推定する理論解は得られているが,その計算には流域の地形・地層情報も併せて必要であり,どのようなデータセットを構築すれば妥当な推定が可能かの議論は進んでいない.そこで本研究では,多様な地質・地形条件を有する北海道を研究対象とし,自然流況として観測される河川流量データを用いた逓減解析を行う.その逓減特性と地理地盤情報システム(GIS)上で国土数値情報ならびに三次元水文地質モデルとを組み合わせることで,流域スケールの透水係数の推定を行い,その結果について考察した.解析は,北海道の126流域において実施し,それらの透水係数を各流域での表層で最も出現頻度の高い地質毎に集計した.その結果,逓減係数の対数比は,各流域の透水性を反映し,3オーダーの幅で変化し,推定した透水係数は全般に古い時代の地層ほど透水性が低くなる傾向が見られた.その値は完新統(H)および上部更新統(Q3)で大きく,また幅が広い傾向があり,流域を構成する地質の影響を受けやすいと考えられる.一方,中部更新統から漸新統(Q2~N1)は10-6 m/s前後1オーダーで安定していた.また基盤(B)では漸新統に比べ再び透水係数が高くなり,かつ推定値の幅も大きい.古い地層である基盤では風化層が発達し,それらが完新統から上部更新統のような帯水層として流出に寄与していると推測された.

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© 2017 水文・水資源学会
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