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鳥取県西部地域において,地下水は水道水源の大半を占める重要な地域の水資源である.この地域の約70%は森林であり,低標高地域においては水田や畑地での農業が盛んである.近年,畑地農業地域を中心に地下水の硝酸態窒素汚染が報告されているが,西部地域を対象とした広域地下水の水質特性について検討した研究はない.そこで,広域の地下水と湧水,地表水を対象に2016年5月より定期モニタリング調査を実施した.その結果,地下水位が浅い弓ヶ浜半島の地下水の1地点でのみ,環境基準の10mg/L以上の硝酸態窒素が検出されたが,高濃度となる空間的範囲は数km以内と限定的であることがわかった.また,溶存イオン濃度についてヘキサダイアグラムを用いて検討したところ,同図は3つの型に大別され,農業活動,生活排水,海からの風送塩が水質形成に影響しており,それらの影響の程度によって地域的に水質特性が異なることが明らかになった.