水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2019年度研究発表会
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【気候変動・地球環境(2)】
カラバカック氷河における降雪量再現および気象強制力誤差が雪氷融解量計算に与える影響の分析
*平岡 ちひろ田中 茂信田中 賢治
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p. 18-

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抄録

中央アジアは,ユーラシア大陸の広大な乾燥・半乾燥地域の中央に位置する.降水量は概して少なく,特に乾燥帯の広がる中央部は年間平均降水量が200mm以下である.よって中央アジアの人々は主に,水利用を氷河の融解水に依存して生活している.いつ,どれだけの水が利用可能かを知るには,年間の水・熱収支の把握だけでなく季節性の再現も必要であり,さらに将来の気候変動に伴う河川流量の変化を知ることが必要となる.当研究室は,2017年7月からキルギス共和国の東部のイシククル湖の南東側に位置するKara-batkak氷河にて気象観測を行っている.本研究ではそのデータをもとに,陸面過程モデルSiBUCを用いて解析を行った.対象地域は, Kara-batkak氷河の標高3429mに位置する氷河観測地点と,そこから7.45km離れた標高2571mのベースキャンプの2点である.対象期間は2017年7月24日から2018年7月3日までで,使用データは現地観測データと再解析データである.観測データは,各要素1時間間隔である.再解析データJRA-55の降水量は1時間毎,気温,比湿,風速そして気圧は6時間毎,下向き短波放射と下向き長波放射は3時間毎に記録されている.解析の際には降水量以外の6要素を1時間毎に時間内挿している.本研究に使用したVaisalaのセンサーWXT436は,降雨量は計測できるが降雪量は計測できていないことが判明した.対象氷河地点ではSWEを観測していないため,氷河観測地点における冬季の降雪量は実測の積雪深と推定される密度を用いて再現する必要がある.そこで,ベースキャンプにおける実測のSWEと積雪深を用いて密度を調べ,その密度を氷河観測地点に適用することで対象氷河における降雪量を再現した.また,JRA-55と観測データを比較し,SiBUCの入力データとなる気象要素7つについて誤差を調べ,それがSWEの計算にどう影響するかを調べた.結果として,特に長波・短波放射の精度がSWEの再現精度には重要で,短波放射は単純な内挿だけでは誤差が大きくなることがわかった.また平均気温が-10℃近い時期はそもそも融解が起こりにくいためSWE値に大きな誤差は出ないが,融雪期の短波放射の精度はSWEの計算に大きく寄与するため,今後は衛星のデータを援用しつつ融雪期の短波放射の精度向上を図る必要がある.

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© 2019 水文・水資源学会
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