本研究では,平成30年7月豪雨で深刻な被害が発生した岡山県倉敷市真備町と愛媛県大洲市大洲を対象に,氾濫原内の脆弱性に着目し,土地利用や建物立地の歴史的変遷と浸水被害の特徴を明らかにした.独自に作成した1970年代以降の3時代の時系列建物ポイントデータを用いた分析により,真備では2.0m以上5.0m未満の浸水が深刻なエリアにおいて約7割が1979年以降に建てられた建物であり,市街化とともに浸水深の深いエリアへと建物が進出していったことが明らかとなった.また両地域とも堤防効果による氾濫原内の脆弱性の増大傾向が見られるものの,両者の間には異なる建物立地形態の変化プロセスがあることが示された.