主催: 水文・水資源学会/日本水文科学会 2021年度研究発表会
会議名: 水文・水資源学会/日本水文科学会 2021年度研究発表会
開催日: 2021/09/15 - 2021/09/18
本研究では、降雨流出プロセスにRRIモデルを用い、流量から水位への変換モデルに多層ニューラルネットワーク(多層ANN)を用いて河川水位を再現することを目的とした。対象河川は九州北部に位置する筑後川水系花月川(A=136.1km2)である。RRIモデルは日本域表面流向マップを用い、2秒の空間解像度でモデリングした。多層ANNは入力層にRRIモデルの河道水深hrと河道流量qr、中間層は3層(各層10ニューロン)、出力層は花月地点の水位である。最適化アルゴリズムはadamを用い、活性化関数はReLUを用い、2012年7月九州北部豪雨を含む2012/5/1 0:00~2012/11/1 0:00で学習させた。学習データはN(0, 1)で正規化し、最適化アルゴリズムにadam、バッチサイズと学習率はそれぞれ200、0.001とした。反復学習回数はドロップアウト条件を設定し、上限を10000回とした。その結果、自己洪水の再現性は相関係数0.885と高いことが確認できた。また、未学習の2017年7月九州北部豪雨で再現性を検証した結果、本手法の相関係数R=0.962であり、H-Q式を用いた従来手法(R=0.893)より再現性が高い結果を得た。また、ピーク水位についてもANNの方が誤差が小さくなった。以上より、RRIモデルと多層ANNを用いることで、未学習洪水に対しても高い再現性を有していることが明らかになった。さらに従来手法のH-Q式より再現性が高いことから、危機管理型水位計のように観測水位しか情報がない地点でも蓄積した過去の水位データをANNに学習させることで現在の河川水位を推定できることを示唆している。なお、本研究ではバッチ学習のみであるが、今後はオンライン機械学習を実装していくことでリアルタイム予測に用いる技術開発を行っていく予定である。