水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2023年度研究発表会
セッションID: OP-7-04
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口頭発表(一般セッション)
気象制御の実現に向けた学際研究: 制御容易性・被害低減効果の定量化に関する試み
*小槻 峻司
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抄録

地球温暖化の進行等により、台風や豪雨などによる極端風水害が激甚化・増加している。気象災害へのこれまでの取組は、構造物等による被害抑止や、災害発生前の準備や発生時の早期警報発出等による被害軽減等が主であった。しかし今後も激甚化・増加が想定される台風や豪雨に対して限界があり、これらに加え災害につながる気象現象自体の回避や軽減を可能とする制御技術の研究開発が必須である。この様な背景のもと、内閣府ではムーンショット目標に「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」することを掲げ、研究開発が進められている。本発表では、我々のグループで取り組みを始めた、気象制御の実現に向けた超学際研究の取り組みを報告する。 気象制御の意思決定には、制御効果最大化の観点が必要不可欠である。気象制御実施には、航空機による人工降雨や洋上施設建設費など、金銭に置換可能なコストを要する。一方、気象制御により、金銭に置換可能な被害や、置換不可能な被災人口・人命損失などの被害低減効果が期待される。気象制御は、気象制御コスト・被害低減効果に基づき意思決定される必要がある。死者の発生しうる場合は、ELSIを含め極めて慎重な判断も必要となる。これらの科学技術的に困難、かつ、社会的にも複雑な問題を解決するには、水文・気象などの地球科学的な研究に留まらず、数理・情報科学などの方法論、法・倫理などの社会科学分野との学際研究が必要不可欠である。本研究の目的は、ボトルネックの1つと想定される、「そもそも制御可能なイベントであるのか、どんな制御が有効か、制御の容易性をどう定量化するのか?」、といった問いに回答する技術を開発し、気象場の制御容易性を定量化し、制御の容易性を判断する指標を確立することである。また同時に、気象に対して有効な操作を特定することで、その操作が実際に洪水被害を低減する事が出来るのか、定量化を試みる (図-1)。気象制御の科学技術としての困難さは、介入により降水量を低減できるか分からない不確実性と、気象を直接改変できる力 (介入力) に限界があることにある。本発表では、この様な困難さの解決を試みるために実施した、アンサンブル気象予測に基づく有効グラフ作成による、「気象現象の中に或る分水嶺」を検知する取り組みについて報告する。

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