日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
総説
家族性地中海熱と月経
岸田 大矢崎 正英中村 昭則
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2022 年 1 巻 1 号 p. 42-48

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抄録
 家族性地中海熱(familial Mediterranean fever: FMF)は繰り返す発熱と漿膜炎発作を特徴とする代表的な自己炎症性疾患である. 発熱発作が起こる機序はまだ完全には解明されていないが, 臨床的には様々な因子が発作の引き金になる場合がある. その中で, 月経は女性FMF患者において発熱発作を修飾する主要な因子である. 自施設での検討では, 過労やストレスなど他の因子に比べ, 月経が女性FMF患者における最多の発作誘発因子であった. このため, 月経周期ごとに発熱, 漿膜炎をきたす患者ではFMFの可能性を考慮する必要がある. 月経が発作の誘因となる患者では発症年齢が低く, 腹膜炎の頻度が高く, また子宮内膜症の合併率が高かった. 月経が発作に関連するメカニズムとしては月経期における女性ホルモンの減少や月経そのものが子宮内膜組織に与える刺激などが想定されている. さらに最近, 子宮内膜症における自然免疫の関与や, 月経困難症におけるMEFV遺伝子多型の存在が報告されており, 月経はFMFの臨床経過に多面的な影響を与えている可能性がある. FMFの治療の第一選択はコルヒチンであるが, 発作が月経と関連する患者では女性ホルモン製剤が有効であった例の報告があり, コルヒチンの不応例, 不耐例では将来的に選択肢の一つになるかもしれない.
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© 2022 一般社団法人 日本免疫不全・自己炎症学会
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