日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
原著(臨床)
本邦シュニッツラー症候群における既存治療時とカナキヌマブ導入後の経過
神戸 直智山本 真有子竹村 浩至加々美 新一郎河原 由恵吉藤 元数馬 安浩城 友泰井澤 和司網野 祥子金澤 伸雄
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2025 年 4 巻 1 号 p. 10-19

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抄録
 シュニッツラー症候群 (Schnitzler syndrome, SchS) は, 蕁麻疹様の紅斑と単クローン性IgM (稀にIgG) 血症を特徴とする, 稀な後天性自己炎症性疾患である. ドイツで実施されたプラセボ対照二重盲検試験により, SchSに対するカナキヌマブの有効性が示されている. これを踏まえ, 我々は日本人SchS患者を対象に第II相試験 (SCan試験) を実施し, カナキヌマブ150 mgの初回投与後24週までのデータ (第I期) を基に, 本邦におけるSchS患者に対するカナキヌマブの臨床的有用性を報告した. しかしながら, 国内の症例数が限られているため, SCan試験は単一群非盲検試験として実施された. そのため, 本試験で認められた臨床症状や検査値の持続的な安定化が, カナキヌマブ投与前にはみられず, 既存治療下では炎症が再燃していたことを示す必要があると考えた. そこで, 本報告では, SCan試験に組み込まれカナキヌマブの投与を受けた5名のSchS患者について, 当初SCan試験では計画していなかった臨床経過を収集し, カナキヌマブ投与前の臨床経過を検討した. その結果, いずれの患者も未治療または既存治療下では持続的な寛解に至らず, 症状の再燃を繰り返していたことが明らかとなった. これらの結果は, カナキヌマブの臨床的な利益が偶然ではなく, SchSに対する有効性を裏付けるものである.
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