日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
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巻頭言
原著(臨床)
  • 井上 翔太, 森谷 邦彦, 立石 昇一朗, 萩原 秀俊, 酒井 祐貴, 廣瀬 文, 武 純也, 仁紙 千尋, 關中 悠仁, 關中 佳奈子, ...
    2025 年4 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/11
    ジャーナル 認証あり
     目的 : 本邦において2001年以降, X連鎖無ガンマグロブリン血症 (XLA) の臨床的特徴に関するまとまった報告は少なく, 当院におけるXLA患者の臨床的特徴と診断, 治療の実態を後方視的に比較検討した.
     方法 : 2023年4月から2024年3月までに当院で診療したXLA患者10例を対象に, 診断時年齢, 家族歴, Ig (Immunoglobulin) 補充療法の開始時期と補充状況, 感染症への罹患状況などを後方視的に調査した.
     結果 : 対象患者10例の診断時年齢の中央値は2.80歳で, 家族歴を有する患者は5例であった. Ig補充療法開始時年齢の中央値は2.85歳で, 投与経路として60%がSCIg療法であった. 家族歴を有する患者は家族歴を有しない患者より早期に診断, Ig補充療法が開始された (p=0.047). Ig補充療法後に中耳炎および肺炎の発生率は減少したが, 副鼻腔炎, 結膜炎, 皮膚感染症は依然として認めた. Igの投与量の中央値はIVIg療法群では904.2 mg/kg/月, SCIg療法群では626.35 mg/kg/月であったが, IgG値はそれぞれ862 mg/dL, 1,064 mg/dLであった.
     考察 : XLAの診断時年齢は若年齢化していたが, 家族歴を有さない例では診断, 加療が遅れ, 気管支拡張症を呈する例も認めた. SCIg療法はより少量で十分なIgG値を得ることができ, 患者の生活の質の向上に寄与する可能性がある. 今後は拡大新生児スクリーニングの普及により, 家族歴のない無症状例に対しても早期診断が進むことが期待される. さらに大規模な研究による詳細な検討が必要である.
  • 神戸 直智, 山本 真有子, 竹村 浩至, 加々美 新一郎, 河原 由恵, 吉藤 元, 数馬 安浩, 城 友泰, 井澤 和司, 網野 祥子, ...
    2025 年4 巻1 号 p. 10-19
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル 認証あり
     シュニッツラー症候群 (Schnitzler syndrome, SchS) は, 蕁麻疹様の紅斑と単クローン性IgM (稀にIgG) 血症を特徴とする, 稀な後天性自己炎症性疾患である. ドイツで実施されたプラセボ対照二重盲検試験により, SchSに対するカナキヌマブの有効性が示されている. これを踏まえ, 我々は日本人SchS患者を対象に第II相試験 (SCan試験) を実施し, カナキヌマブ150 mgの初回投与後24週までのデータ (第I期) を基に, 本邦におけるSchS患者に対するカナキヌマブの臨床的有用性を報告した. しかしながら, 国内の症例数が限られているため, SCan試験は単一群非盲検試験として実施された. そのため, 本試験で認められた臨床症状や検査値の持続的な安定化が, カナキヌマブ投与前にはみられず, 既存治療下では炎症が再燃していたことを示す必要があると考えた. そこで, 本報告では, SCan試験に組み込まれカナキヌマブの投与を受けた5名のSchS患者について, 当初SCan試験では計画していなかった臨床経過を収集し, カナキヌマブ投与前の臨床経過を検討した. その結果, いずれの患者も未治療または既存治療下では持続的な寛解に至らず, 症状の再燃を繰り返していたことが明らかとなった. これらの結果は, カナキヌマブの臨床的な利益が偶然ではなく, SchSに対する有効性を裏付けるものである.
編集後記
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