抄録
諸外国の報告を見ると, 救命救急センターICUに集中治療専従医が常駐することにより患者の予後が改善することが示されている。しかし, 本邦では未だ, そのような報告は行われていない。そこで我々は, 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター内ICU病棟において, 集中治療専従医の勤務形態が変更となった前後1年間ずつの外傷患者の予後を比較検討した。変更前後において, 患者背景, 重症度及び死亡率には差が認められなかった。しかし, 多変量解析にて後期群は予後が改善している傾向が認められた (odds ratio: 0.537, P = 0.096)。本邦の救急医療は諸外国と異なった発展をしてきており, 現在も外傷患者の予後を改善するための取り組みが行われている。施設の整備の充実, 外傷外科医の育成とともに, 救命救急センターICUに集中治療専従医が常勤することで, 今後の外傷治療の成績が改善する可能性が高いと思われる。