抄録
2003年に日本集中治療医学会新生児・小児集中治療委員会が行った「小児集中治療の全国アンケート調査」で得られたデータを使用し, 小児集中治療の有効性を明確にするために “総死亡率” と “不慮の事故による死亡率” に分けて, 年齢別に, 小児集中治療室 (pediatric intensive care unit, PICU) を有する16施設のある都道府県とそれ以外の地域で比較した。次に, 諸外国のデータを基に, 実際に日本全国で必要とされるPICU病床数を試算した。更に, 今後小児集中治療体制が確立し, 現在, 先進諸国との比較で死亡率の高い1~4歳までの小児について, これを改善できたと仮定した場合の, 全国の救命人数を試算した。その結果, “不慮の事故” においては16施設の地域で有意に死亡率が低いことが明らかとなった。さらに, 諸外国のデータにより, 日本全国で少なくとも約500床以上のPICU病床数が必要であると試算された。また, このような小児集中治療体制を確立することにより, 年間約500人の1~4歳児の救命が可能であると試算された。以上, 我が国で初めて小児集中治療の有効性を示唆する結果を得た。