2007 年 14 巻 3 号 p. 331-334
症例は20歳代の男性。5年前に脾臓摘出術の既往がある。発熱・嘔吐・下痢・全身倦怠感が出現し, 翌日にはショック状態となったため, 当院紹介となった。その後意識レベルの急速な低下を認め, 精査の結果, ペニシリン耐性肺炎球菌による髄膜炎と診断された。抗生物質, 免疫グロブリン, ステロイドなどによる加療を開始したものの症状の進行が急激であり, 第8病日に永眠された。脾摘後には有夾膜細菌に対して易感染性となり, この感染が原因で急激な敗血症や髄膜炎を引き起こす病態がある。脾摘後の患者とその家族には重症感染症の可能性を十分に認識させ, 軽症であってもすぐに病院を受診するよう指導することが重要である。また肺炎球菌ワクチンの接種などの予防策を講じておかなければならない。なお起因菌がペニシリン耐性肺炎球菌の場合もあり, 抗生物質の選択にも十分な考慮が必要である。