2007 年 14 巻 3 号 p. 325-330
呼吸不全, 腎不全を合併したhuman immunodeficiency virus (HIV) 感染者に持続的血液濾過透析 (continuous hemodiafiltration, CHDF) をはじめとした集中治療を行い, 救命した症例を経験した。患者は29歳, 男性。熱発, 呼吸苦にて入院。胸部X線写真上カリニ肺炎を疑う所見を認め, HIV抗体検査にて陽性と判明した。治療開始後も呼吸状態は悪化し, 腎不全も合併したため当院ICUに入室となった。入室後, 人工呼吸管理, CHDFを開始し, さらに抗菌薬, 抗ウイルス薬, 抗真菌薬の投与, ステロイドパルス療法を行った。その結果, CHDF, 人工呼吸管理から離脱でき, 第21ICU病日にICUを退室した。その後, 前医に転院し外来経過観察中である。HIV感染者に対する集中治療は, その適応基準, 医療従事者の感染の危険性など様々な問題を抱えているが, 本邦においてもHIV感染者は着実に増加しており, 今後, 集中治療の適応となるHIV感染者も増加すると考えられる。