日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
多発外傷後に著明な抱合型高ビリルビン血症を来たした2症例についての検討
一ノ宮 大雅寺尾 嘉彰東島 潮田邉 孝大三浦 耕資福崎 誠
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2008 年 15 巻 1 号 p. 87-92

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抄録

多発外傷後に抱合型優位の著明な高ビリルビン血症を呈した2症例を経験した。一般的に血腫の再吸収や多量の輸血は非抱合型ビリルビンの産生を増大させると言われている。しかし多発外傷においては,ショックに伴う肝血流減少や,感染,薬剤投与などが抱合型ビリルビンの肝内胆管への能動輸送を障害し,そこへ血腫再吸収や輸血に伴うビリルビンの産生亢進が加わることで,最終的に抱合型優位の著明な高ビリルビン血症が起こったと考えられた。また,ビリルビン値改善の経過から,絶飲食によるビリルビンの再吸収亢進や,PEEP負荷による人工呼吸,ショックや高用量のカテコラミン,鎮静薬投与に伴う消化管運動障害,胆汁排泄障害などが複合的に増悪因子として関与している可能性が示唆された。さらにシベレスタットナトリウム水和物の高ビリルビン血症への影響についても今後検討の必要があると思われる。また抱合型優位の高ビリルビン血症では,それ自体を問題とした治療は必要ないと考えられる。

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© 2008 日本集中治療医学会
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