抄録
症例は34歳,男性。胸部圧迫感,腹痛,呼吸困難の症状で発症した。胸部X線写真にて肺水腫を認め,心エコーにて左室駆出率20%と,びまん性左室壁運動低下を認めた。腹部CTで左副腎に腫瘤を認め,血中アドレナリン濃度が52,009 pg・ml-1,ノルアドレナリン濃度が35,810 pg・ml-1という異常高値から褐色細胞腫と診断した。末梢血管抵抗増加に対して塩酸ニカルジピンと塩酸ブナゾシンの投与を行った。肺水腫はすみやかに改善し,循環動態は安定した。血中カテコラミン濃度は経過とともに低下し,心収縮力は改善した。第12病日に左副腎摘出術を施行し,術後血中カテコラミン濃度は正常化し,第28病日に退院した。本症例の病因として,カテコラミン心筋症と血管透過性亢進による肺水腫が考えられた。