2008 年 15 巻 2 号 p. 205-212
【目的】急性大動脈解離の内科治療患者には高率にせん妄が生じる。本研究ではパンフレットを使用し,患者の病気,治療に関する知識不足に対応することで,せん妄発生が減少するかを検討した。【方法】2000~2005年の急性大動脈解離の内科治療患者45人について,2003年からのパンフレット介入前後で,せん妄発生に影響を及ぼすと思われる因子,せん妄・安静不遵守・ライン自己抜去の発生率を診療記録に基づいて調査した。【結果】せん妄は入院翌日に最も多く(42.9%),介入後せん妄発生は64.0%から25.0%と有意に減少した(P=0.009)。安静不遵守,ライン自己抜去も共に減少した。両群でCRPmax,飲水開始日に有意差が見られたが,多変量ロジスティック回帰ではせん妄発生に影響した因子にはパンフレット介入の有無のみが選択された。【結論】急性大動脈解離の内科治療においてパンフレットによりせん妄発生が減少する可能性が示唆された。