抄録
Posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)は,頭痛,意識変容,視野障害,痙攣を主症状とし,主に後頭葉・頭頂葉白質の左右対称なvasogenic edemaを呈する脳疾患であり,適切な治療で可逆的に改善するのが特徴である。発症には異常高血圧の関与が多く,高血圧による脳血管の自動調節能障害に起因する脳血管関門の破綻が一因と考えられている。1996年のHincheyらの報告以来,疾患の認識が広がり,様々な状況下での報告例があるが,小児の周術期の報告は限られている。今回我々は,5歳男児でWilms腫瘍肝転移に対する肝部分切除後に,周術期の持続的な高血圧が関与したと思われるPRESを発症したが,血圧の調節や脳圧降下により画像上改善し,後遺症なく退院した症例を経験した。小児腹部手術周術期にもPRES発症の可能性があり,血圧や輸液の厳重な管理が必要である。