日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
Wilms腫瘍肝転移に対する肝部分切除術後にposterior reversible encephalopathy syndromeを発症した小児の一例
加藤 純悟辻田 美紀山本 信一桜庭 茂樹大脇 明
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 15 巻 3 号 p. 323-326

詳細
抄録
Posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)は,頭痛,意識変容,視野障害,痙攣を主症状とし,主に後頭葉・頭頂葉白質の左右対称なvasogenic edemaを呈する脳疾患であり,適切な治療で可逆的に改善するのが特徴である。発症には異常高血圧の関与が多く,高血圧による脳血管の自動調節能障害に起因する脳血管関門の破綻が一因と考えられている。1996年のHincheyらの報告以来,疾患の認識が広がり,様々な状況下での報告例があるが,小児の周術期の報告は限られている。今回我々は,5歳男児でWilms腫瘍肝転移に対する肝部分切除後に,周術期の持続的な高血圧が関与したと思われるPRESを発症したが,血圧の調節や脳圧降下により画像上改善し,後遺症なく退院した症例を経験した。小児腹部手術周術期にもPRES発症の可能性があり,血圧や輸液の厳重な管理が必要である。
著者関連情報
© 2008 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top