日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
骨盤骨折骨接合術中に発症した重症肺塞栓症の1症例
木村 妙上田 伸英河野 靖生新山 修平渡邉 誠之加納 龍彦
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2008 年 15 巻 3 号 p. 327-330

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抄録
患者は59歳,男性。交通外傷による骨盤骨折で10日間の骨盤牽引後,骨接合術が予定された。術中動脈損傷による大量出血を来し,その直後に低血圧と呼気終末二酸化炭素濃度(end-tidal carbon dioxide, EtCO2)の低下を認め,同時にSpO2の低下を来した。動脈血ガス分析でEtCO2とPaCO2の解離および経食道心臓超音波検査で右心負荷所見を認めたため急性肺塞栓症を最も疑った。血栓溶解療法を施行したが効果は認められず,継続する低酸素血症と不安定な循環動態のため,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入した。PCPS装着後も呼吸循環動態が改善しなかったため,人工心肺を用いた肺動脈内血栓摘除術を施行した。その後順調に回復し,3日目にPCPSを離脱した。術後のリハビリテーションの際,残存する深部静脈血栓による肺塞栓症再発予防のために回収式下大静脈フィルターを留置した。その後,下大静脈フィルターを抜去し70日後に後遺症なく退院した。時機を逸しない早期のPCPSの導入と肺動脈内血栓摘除術が重症肺塞栓症の患者には必要であると考えられた。
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© 2008 日本集中治療医学会
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