日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
尿路感染症により意識障害を呈した一症例
安達 普至岸川 正信則尾 弘文大屋 聖郎林田 和之
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2010 年 17 巻 3 号 p. 315-320

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抄録
症例は69歳,男性。II型糖尿病等のため他院で入院加療中に意識障害を認め,紹介転院となった。重篤な肝障害の既往はなかった。来院時,意識レベルはGlasgow coma scale(GCS)6,頭部CTで陳旧性脳梗塞を認めた。腹部CTで左尿管結石による左腎盂の拡張を伴う腎盂腎炎を認めた。第2病日も意識レベルはGCS 6のままで,血中アンモニア値が241μg·dl−1と高値だった。頭部MRIでは,両側視床・両側島に左右対称性の浮腫状の変化を認め,高アンモニア血症の所見と矛盾しなかった。左尿管にステント留置後より十分な尿量が確保でき,徐々に血中アンモニア値は正常化し,意識レベルも改善した。なお,血液培養・左腎盂尿培養よりProteus mirabilisを検出した。本症例の意識障害の原因は,尿路感染症による高アンモニア血症と考えられ,その機序はurea-splitting organismであるProteus mirabilisが尿中尿素を分解し,生成したアンモニアが周囲の静脈へ移行したためと推測された。
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© 2010 日本集中治療医学会
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