抄録
症例は69歳,男性。II型糖尿病等のため他院で入院加療中に意識障害を認め,紹介転院となった。重篤な肝障害の既往はなかった。来院時,意識レベルはGlasgow coma scale(GCS)6,頭部CTで陳旧性脳梗塞を認めた。腹部CTで左尿管結石による左腎盂の拡張を伴う腎盂腎炎を認めた。第2病日も意識レベルはGCS 6のままで,血中アンモニア値が241μg·dl−1と高値だった。頭部MRIでは,両側視床・両側島に左右対称性の浮腫状の変化を認め,高アンモニア血症の所見と矛盾しなかった。左尿管にステント留置後より十分な尿量が確保でき,徐々に血中アンモニア値は正常化し,意識レベルも改善した。なお,血液培養・左腎盂尿培養よりProteus mirabilisを検出した。本症例の意識障害の原因は,尿路感染症による高アンモニア血症と考えられ,その機序はurea-splitting organismであるProteus mirabilisが尿中尿素を分解し,生成したアンモニアが周囲の静脈へ移行したためと推測された。