日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
ピルジカイニド中毒に高K血症を合併し重篤な心室性不整脈を呈したがcontinuous hemodiafiltration(CHDF)が奏功した1例
安田 治正三嶋 正芳米本 俊良奥山 裕司
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2010 年 17 巻 3 号 p. 327-332

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抄録
症例は61歳,男性。心筋梗塞に伴う左室自由壁破裂にて修復術を施行,術後心房細動となった。電気的除細動にて回復後,洞調律維持を期してピルジカイニド150 mg·day−1が投与されていた。術後第47病日,高K血症に対し透析を予定したが,心室頻拍を呈しICU再入室となった。高K血症の心室頻拍への関与は否定できず,直ちに持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始した。血清K値は12時間で正常域に復したが,多形性心室頻拍が持続していたため,ピルジカイニドによる催不整脈作用を疑った。不整脈出現中,血中ピルジカイニド濃度は終始高値(最低4.62 μg·ml−1,有効治療域0.2~0.9 μg·ml−1)であった。CHDF開始後36時間で洞調律に復帰した。この時,血中ピルジカイニド濃度は3.36 μg·ml−1と,なお高値であった。CHDFによるピルジカイニドの除去効果は不十分と考えられたが,血中濃度の低下に伴い洞調律復帰が得られた。ピルジカイニド中毒による不整脈の治療に際し,可及的速やかに血中濃度を下げることが有効であり,CHDFの有用性が示された。
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© 2010 日本集中治療医学会
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