2022 年 75 巻 6 号 p. 305-309
近年, 世界中における高齢者の増加に伴い, 認知機能維持に役立つ安全で安心な食品の開発が期待されている。発酵乳は古くから健康に良い効果を持つと考えられ, その生理機能に関する研究が行われてきた。我々は, Lactobacillus helveticusを用いて脱脂乳を発酵させた酸乳に着目し, 認知機能への影響を検証した結果, 記憶力改善作用を見出し, 活性本体として牛乳βカゼイン由来の19残基ペプチドNIPPLTQTPVVVPPFLQPE (ラクトノナデカペプチド, 以下LNDP) を同定した。食品用途への応用を進めるべく, LNDP含有食品が健常者の認知機能へ与える効果について, 対象, 摂取期間, 神経心理評価を変えた臨床試験にて検証した。その結果, LNDP (2.1-4.2 mg/日, 8-24週間) を含有する飲食品の摂取により, 注意力, 情報処理能力, 記憶力などの認知機能維持が認められた。これらの研究成果を基に, LNDP含有食品は機能性表示食品として実用化されており, 高齢化社会における人々の健康維持, 増進に貢献できるものと考えている。