日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
若年女性にみられた非腫瘍随伴性抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎の1症例
浜野 宣行高橋 幸利岡本 明久三木 博和阪本 幸世西 憲一郎中尾 慎一新宮 興
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2011 年 18 巻 2 号 p. 233-237

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抄録

精神症状や痙攣発作などの辺縁系障害を認める辺縁系脳炎の中でも抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎が近年話題となっており,若年女性の卵巣奇形腫に合併する頻度が高いことが報告されている。我々は,若年女性の腫瘍合併を伴わない抗NMDA受容体脳炎の1症例を経験した。抗痙攣薬や鎮静薬投与下でも痙攣抑制が困難な状況が継続したが,ステロイドパルス療法による一時的な症状の改善は認められた。血液検査,脳波検査,画像検査などでは特に有意な所見は得られず,また腫瘍の検出にも至らなかった。しかし,髄液中のグルタミン酸受容体抗体が検出され,本症例の辺縁系脳炎における自己抗体の介在が示唆された。重度の辺縁系障害のために長期の人工呼吸管理を余儀なくされたが,緩徐な症状軽快を認め,ICUを退室した。辺縁系脳炎は稀な疾患であるが,比較的治療反応性であるため,本疾患を疑った場合には早期に抗体検査や腫瘍検索を行うべきである。

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© 2011 日本集中治療医学会
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