抄録
新生児の重症ジゴキシン中毒を経験したため報告する。症例は生後23日の女児。生後2日目に心室中隔欠損症(ventricular septal defect, VSD),動脈管開存症(patent ductus arterious, PDA),心房中隔欠損症(atrial septal defect, ASD)を指摘され,フロセミド,スピロノラクトン,ジゴキシン,マレイン酸エナラプリルで加療が開始された。前医退院後(生後8日目)より嘔吐が出現し,生後23日目に当院紹介入院となった。入院時,体重減少,大泉門陥凹,乏尿,末梢冷感著明とショック状態を呈しており,血液検査にて血清ジゴキシン濃度,blood urea nitrogen(BUN),creatinine(Cre),血清カリウム濃度の上昇を認めた。以上より,高カリウム血症を伴う重症ジゴキシン中毒,急性腎不全と診断し,内服薬を中止。輸液負荷,glucose-insulin therapy(GI療法)を行い救命した。本邦ではジゴキシンの特異抗体が未発売であり,またジゴキシンは分布容積が大きく血液浄化療法では除去できない。したがって,ジゴキシンが排泄されるまでは血清電解質の補正や不整脈への対症療法を行い,重篤な合併症を予防することが重要である。