抄録
H1N1インフルエンザによる重症肺炎に対し膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を用い救命できた1症例を経験した。入院5日前から上気道炎症状があり,近医にて抗菌薬を処方されていた。来院時のインフルエンザ迅速検査は陰性であった。重度の呼吸不全のため当院に緊急入院し集中治療管理するもP/F比が75かつMurray score 3.4であったため,第2病日にECMOを導入した。第5病日には浸潤影が改善,第7病日には自己肺でP/F比が289と酸素化の改善を認めたため,ECMOから離脱した。重症インフルエンザ肺炎の救命には迅速検査が陰性であってもインフルエンザ肺炎を疑って治療を始め,重度の低酸素血症に対して肺炎が回復するまでの短期間,ECMOの使用を考慮するべきである。