日本集中治療医学会雑誌
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18 巻 , 3 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
今号のハイライト
総説
  • 立野 淳子, 山勢 博彰, 山勢 善江
    2011 年 18 巻 3 号 p. 337-345
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    2006年本学会において,集中治療における終末期医療のあり方が示されて以降,終末期患者の家族へのケアにも焦点があてられるようになった。今回,集中治療領域における終末期患者の家族ケアに関する2000年以降の海外文献をレビューした結果,以下のことが明らかになった。予期せず患者の死期が迫っていることを告げられた家族は,心理的危機に陥りやすく,様々な悲嘆反応を呈する。代理意思決定は,家族の精神健康状態を悪化させることもあれば,終末期ケアに対する満足度を高めることもあり,意思決定に至るプロセスが重要である。家族ケアでは,家族中心の意思決定を導くことや,家族と良好なコミュニケーションをとることが重要であり,これらは家族の終末期ケアの満足度を高めることにつながる。終末期にある患者の苦痛を軽減することは,家族に心理的安寧をもたらす間接的ケアになる。また家族のニードを満たせるように調整することも必要である。
解説
  • 窪 孝充, 中嶋 大晃, 近藤 俊一, 玉井 直
    2011 年 18 巻 3 号 p. 347-354
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    血液浄化療法中にシリンジポンプで抗凝固薬のボーラス注入と注射器への逆流,そして薬液注入開始遅延を経験する。主な原因は,血液浄化装置付属シリンジポンプへ注射器を装着する際の構造的な隙間である。また,注射器とシリンジポンプ固有のコンプライアンス,体外循環時における血液回路内の急激な圧力変動も原因となる。逆流やボーラス注入量は1 ml程度ではあるが,脱血不良の頻度が多くなれば抗凝固薬の実残量が不明瞭となり,適正投与の管理が困難となる。薬液の注入開始遅延時間については間欠的血液浄化装置,持続的血液浄化装置ともに約40分と報告されており,半減期の短い薬剤を使用している場合には血液回路内凝血の原因となる。日常的な対策は,(1)構造的な隙間を埋める,(2)低コンプライアンス注射器と可能な限り低サイズの注射器を使用する,(3)時間当たりの薬液注入速度を速くすることである。また,メーカーによるスリット隙間や注射器のコンプライアンスの標準化が望まれる。
原著
  • 工藤 明, 高瀬 肇, 片貝 宏
    2011 年 18 巻 3 号 p. 355-362
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    【目的】アルコールを多飲する患者はICUでせん妄状態を起こしやすいかどうか検討した。【方法】対象患者は,2001年7月から2005年4月までに腹部手術を受け,経過観察目的にICUに入室した65~81歳でAmerican Society of Anesthesiologists(ASA)2~3の患者83人とした。すべての患者はICU入室時には気管挿管を行っていなかった。患者は術前に飲酒歴,飲酒量,1週間の飲酒回数,種類などが聴取され,state-trait anxiety index(STAI),mini-mental state test(MMS),depression scale testなどの精神機能検査が行われた。また,術後痛やconfusion assessment methodを用いたせん妄の調査,周術期における血中コルチゾールの測定が行われた。【結果】アルコールを25 g/day以上飲酒している18人の患者のうち,7人(39%)がICUでせん妄を起こした。一方,アルコールをほとんど飲酒しない65人の患者のうち,ICU症候群を起こした患者は4人(6%)であり,アルコールを25 g/day以上飲酒している患者のICUでのせん妄の発症率は有意に高かった。また,せん妄を起こした患者の術中および術後3日目までの血中コルチゾール値は有意に高かった。術前のSTAI,MMS,depression scale score,術後のvisual analogue scale(VAS)に有意な差はなかった。【結論】アルコールを25 g/day以上飲酒している患者はICUでせん妄を起こしやすいので,せん妄への対策も行う必要がある。
  • 林 靖之, 西内 辰也, 梶野 健太郎, 大石 泰男, 行岡 秀和, 石見 拓, 横山 広行, 甲斐 達朗
    2011 年 18 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    【目的】救急蘇生ガイドラインの変更に伴う,目撃された病院外心原性心停止症例の転帰の変化について検討した。【対象と方法】2005年1月から2008年12月までの4年間に大阪府で発生した病院外心停止症例のうち,市民に目撃された心原性心停止症例5,018例を対象として,ガイドライン変更前後で2群(G2000群2,185例,G2005群2,833例)に分け,それぞれの転帰等について比較検討した。【結果】背景因子については,市民による電気ショック実施率,救急救命士による気管挿管および薬剤投与実施率はG2005群が有意に高値であった。また119番通報から救急救命士による初回電気ショックまでの時間はG2005群で有意に延長していた。転帰については,心拍再開率,1ヶ月生存率,予後良好1ヶ月生存率いずれもG2005群が有意に高値であった。また多変量解析でもG2005群は予後良好1ヶ月生存率の向上に寄与していた。【結論】救急蘇生ガイドライン変更後の目撃された病院外心原性心停止症例の転帰は改善されていた。今後,他地域でも同様の検証が望まれる。
  • 志馬 伸朗, 梅垣 岳志, 関本 美穂, 今中 雄一, 阪井 裕一, 羽鳥 文麿, 日本集中治療医学会新生児小児集中治療委員会
    2011 年 18 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    【目的】市中病院の小児敗血症の疫学と診療現状を,diagnosis procedure combination(DPC)データを元に評価する。【方法】DPCを適用する66市中病院においてinternational classification of disease(ICD)-10コード上で敗血症と登録された小児(月齢1ヶ月~19歳まで)388症例,成人5,215症例を対象とした。【結果】小児は全症例の6.9%を占め,乳児が小児全体の46.1%を占めた。入院1,000症例あたり発生率は成人で14.5症例,小児で8.4症例であった。成人に比べ小児では退院死亡率は低く(33.5%対0.5%,P<0.001),人工呼吸,中心静脈カテーテル,強心薬などの実施割合やICU利用率は成人の1/7~1/10程度で,在院日数も短かった(26日対7日,中央値,P<0.01)。入院1日あたり医療費の中央値は成人・小児共に約4万円であった。【結論】市中病院でDPC上登録された小児敗血症は,発生率が比較的高く,成人に比べて重症度や死亡率が低かった。ICD-10コード適用の問題,患者背景や基礎疾患が影響している可能性がある。本分析手法のみでは詳細な情報解析に限界があることも示唆された。
症例報告
  • 矢野 隆郎, 山内 弘一郎, 丸田 豊明, 丸田 望, 窪田 悦二, 竹智 義臣, 恒吉 勇男
    2011 年 18 巻 3 号 p. 375-380
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    【症例】34歳,男性。【病歴と経過】化学工場で深さ2 mの35%塩酸タンクに転落し,約10分間全身が塩酸に浸り,転落から10分後(転落の目撃者なく最長予測時間)に発見され,約18分後に当院に搬送された。来院時,意識清明で発語も認めたが,顔面・頭部を含む全身熱傷のため気管挿管した。動脈血液ガス検査で,pH 6.76,PaCO2 26.3 mmHg,PaO2 268 mmHg,BE -27.8 mmol/l,乳酸値124 mg/dl,P50 98 mmHgと高度な代謝性アシドーシス,高乳酸血症,P50の上昇を認めた。重炭酸ナトリウム250 mlを投与したところ,PaO2 492 mmHg,P50 34 mmHgと一時的な改善を認めたが,多臓器不全が進行し2日目に死亡した。【結語】塩酸が皮膚から大量に吸収され,高度な代謝性アシドーシスとP50の上昇を合併した症例を経験した。症状の進行が急速かつ重篤であり,救命には至らなかった。文献上同様な報告は見当たらなかった。
  • 杉村 朋子, 村井 映, 益崎 隆雄, 大田 大樹, 田中 潤一, 石河 利之, 喜多村 泰輔, 石倉 宏恭
    2011 年 18 巻 3 号 p. 381-385
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    Acute respiratory distress syndrome(ARDS)の治療戦略は,肺血管透過性亢進を抑制しつつ,過剰な肺血管外水分を速やかに排除することである。今回,治療効果判定にPiCCO®(Pulsion Medical Systems, Germany)を使用し,厳密な体液管理を行うことで早期人工呼吸器離脱に成功した1例を報告する。症例は,72歳,女性。2月某日に呼吸困難感が出現。近医の検査で,びまん性浸潤影,炎症反応上昇を認め,肺炎による急性呼吸不全と診断され気管挿管を実施後,翌日当センターへ転院となった。急速に進行する両肺野の浸潤影,P/F比73,PiCCO®による循環動態評価からARDSと診断した。人工呼吸管理下で抗菌薬と好中球エラスターゼ阻害薬投与を開始し,肺血管透過性亢進に伴う肺血管外水分量増加および循環血液量是正のため,厳密な体液管理を行った。第3病日には肺血管透過性は正常化し,肺血管外水分量も速やかに改善を認めた。第6病日には両肺野の浸潤影は改善し,P/F比300以上となったため人工呼吸器から離脱し,ICU退室となった。
  • 高木 俊介, 岩下 眞之, 大川 卓巳, 大井 康史, 松崎 昇一, 下山 哲, 田原 良雄, 鈴木 範行
    2011 年 18 巻 3 号 p. 387-392
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    心肺停止蘇生後患者の脳低温療法中はshiveringにより筋弛緩薬の投与が必要となることが多く,鎮静深度の評価は困難となる。今回,脳低温療法を施行した2症例に対し鎮静深度の指標としてbispectral index(BIS)値及び脳波を測定したので報告する。症例1は37歳,男性。脳低温療法中のBIS値60以下を目標に鎮静薬を投与した。脳波上はα波主体でBIS値と類似した変化を示した。脳低温療法終了後,早期に覚醒した。症例2は63歳,男性。脳低温療法中のBIS値が10以下であり,鎮静薬なしで管理した。脳波は平坦脳波を示し,神経学的予後は不良だった。BISは管理が容易であるが,脳に障害のある患者に対する鎮静深度の評価法としては確立されていない。しかしながら,BISを心肺停止蘇生後患者の脳低温療法中に使用したところ,鎮静深度の評価に有用であり,浅鎮静を避けることができた。BIS値0の場合は,神経学的予後不良の推定因子となる可能性が示唆された。
  • 澤田 麻衣子, 牛島 一男, 加納 龍彦, 笹野 寛, 勝屋 弘忠
    2011 年 18 巻 3 号 p. 393-396
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    気管切開が人工呼吸からの離脱に有効であった小児症例を経験した。症例は先天性筋ジストロフィーと高度側彎症を合併した12歳女児で,上気道炎を契機とした急性呼吸不全に対し人工呼吸管理を必要としたが,気管挿管操作に約2時間を要した。その後,2度の自己抜管と再挿管を繰り返し,挿管に難渋すると共に肺炎と無気肺を合併,鎮静薬の増量を余儀なくされた。この悪循環を断つために気管切開を施行した。その結果,鎮静薬を減量,低酸素に陥ることなく人工呼吸器から離脱し,現在はスピーチカニューラ付きで通学している。
  • 谷内 仁, 池田 寿昭, 池田 一美, 須田 慎吾
    2011 年 18 巻 3 号 p. 397-400
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    プロカルシトニン(procalcitonin, PCT)は全身性細菌感染症のバイオマーカとして有用であり,敗血症の重症度ともよく相関するとされる。今回,感染症を伴わない高PCT血症を呈した悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome, NMS)疑いの一例を経験したので報告する。症例は66歳,男性。中咽頭癌の根治術後,摂食不良となり胃瘻を造設した。3日後より発熱し,血液生化学検査ではCRP,PCT,CKの上昇を認めたため,敗血症および横紋筋融解症が疑われ,ICU入室となった。入室時バイタルサインは安定し,理学所見上感染巣は認めなかった。胃瘻造設後ハロペリドールが増量されていたことから,向精神薬増量によるNMSが疑われた。輸液管理のみでCRP,PCTは低下した。本症例においてPCTが上昇した原因は特定できなかったが,細菌感染症を伴わない悪性症候群の疑い例で,炎症に付随しPCTが上昇する可能性があることに注意する必要がある。
  • 大村 和也, 小野 大輔, 川嶋 隆久, 加藤 隆之, 藤田 百合子, 板垣 有亮, 渡辺 友紀子, 石井 昇
    2011 年 18 巻 3 号 p. 401-404
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    栄養チューブ挿入時の合併症の報告は少なくない。今回,栄養チューブにより食道穿孔を来たした症例を経験したため,報告する。症例は87歳,女性。吐血を主訴に当院へ搬入となった。緊急内視鏡検査にて食道裂孔ヘルニアと下部食道びらんからの出血を認めた。精査目的にびらん周囲より生検を行った。入院4日目に経鼻栄養チューブを挿入し,胸部単純X線検査と聴診法にて胃内留置を確認した。経腸栄養開始10時間後に腹痛を訴えたためすぐに中止したが,発熱,炎症反応の上昇を認めた。胸腹部CT検査にて栄養チューブによる食道穿孔が疑われ,緊急手術を行った。チューブは食道後壁より後腹膜腔内へ穿通していた。術後経過は良好であった。栄養チューブ挿入は比較的簡易な処置であるが,胸部単純X線検査と聴診法という標準的な手順で位置確認をしても,適切な位置に留置しているとは限らない。栄養チューブ挿入時の位置確認の方法の徹底が必要である。
  • 方山 真朱, 熊澤 淳史, 大江 恭司, 湯澤 紘子, 伊藤 史生, 糟谷 美有紀, 伊良部 徳次
    2011 年 18 巻 3 号 p. 405-409
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    H1N1インフルエンザによる重症肺炎に対し膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を用い救命できた1症例を経験した。入院5日前から上気道炎症状があり,近医にて抗菌薬を処方されていた。来院時のインフルエンザ迅速検査は陰性であった。重度の呼吸不全のため当院に緊急入院し集中治療管理するもP/F比が75かつMurray score 3.4であったため,第2病日にECMOを導入した。第5病日には浸潤影が改善,第7病日には自己肺でP/F比が289と酸素化の改善を認めたため,ECMOから離脱した。重症インフルエンザ肺炎の救命には迅速検査が陰性であってもインフルエンザ肺炎を疑って治療を始め,重度の低酸素血症に対して肺炎が回復するまでの短期間,ECMOの使用を考慮するべきである。
短報
調査報告
  • 田口 豊恵
    2011 年 18 巻 3 号 p. 429-432
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,ICUに入室した患者の死亡月と時刻に関する法則性を明らかにすることである。【方法】本研究のデザインは回顧的研究である。対象は,京都府下にある総合病院ICU入室中に死亡した患者。5年間の入院診療録をもとに,患者の死亡年月日,死亡時刻および死に至った直接的な原因について調査した。死亡時刻に関しては,日周期変動を三角関数あてはめによる最小自乗法を用いて解析し,時間的法則性について評価した。【結果】患者の死亡月には夏季および冬季にピークがあり,一方,死亡時刻は15時前後にピークがあることが示された。【結論】患者の死亡月や死亡時刻が示すリズム性を考慮した上で,ICUのシフトワークや管理体制の強化をはかる必要がある。
  • 日本集中治療医学会看護部会
    2011 年 18 巻 3 号 p. 433-440
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2012/01/15
    ジャーナル フリー
    我が国のICU看護体制の実態を知るために,日本集中治療医学会看護部会は全国調査を行った。看護部会常任委員会・委員会で調査内容を検討した計31項目の質問紙を独立行政法人福祉医療機構情報事業部WAM NET事業課サイトで検索した1,188施設に郵送し,471施設,481 ICUから回答が得られた。ICUベッド数の最頻値は6,総病床数に占める割合は1.8%,年間のべ入室患者数中央値は1,220人,年間平均在室日数の中央値は4.4日であった。73.7%は一般ICUであり,管理責任医師の所属は麻酔科が最も多かった。25.2%に集中治療を担当する医師・看護師以外の専従医療専門職者がいたが,24時間体制勤務は10%以下であった。66.7%のICUに新卒看護師が配属され,年間新規配属者の割合は25%,年間離職者は10.2%であった。平日日中・夜間ともに約80%のICUで看護師対患者1:2以上を確保できていた。正確なICU在室日数統計量,信頼できる全国ICUデータベースの開発,新規配属看護師の許容割合などの課題が示唆された。
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