抄録
栄養チューブ挿入時の合併症の報告は少なくない。今回,栄養チューブにより食道穿孔を来たした症例を経験したため,報告する。症例は87歳,女性。吐血を主訴に当院へ搬入となった。緊急内視鏡検査にて食道裂孔ヘルニアと下部食道びらんからの出血を認めた。精査目的にびらん周囲より生検を行った。入院4日目に経鼻栄養チューブを挿入し,胸部単純X線検査と聴診法にて胃内留置を確認した。経腸栄養開始10時間後に腹痛を訴えたためすぐに中止したが,発熱,炎症反応の上昇を認めた。胸腹部CT検査にて栄養チューブによる食道穿孔が疑われ,緊急手術を行った。チューブは食道後壁より後腹膜腔内へ穿通していた。術後経過は良好であった。栄養チューブ挿入は比較的簡易な処置であるが,胸部単純X線検査と聴診法という標準的な手順で位置確認をしても,適切な位置に留置しているとは限らない。栄養チューブ挿入時の位置確認の方法の徹底が必要である。