日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
急性期からの高気圧酸素治療の併用が効果的であった深頸部膿瘍の一例
山田 法顕熊田 恵介中野 通代白井 邦博吉田 省造水田 啓介豊田 泉小倉 真治
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2012 年 19 巻 1 号 p. 65-70

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抄録
上顎洞膿瘍が頸部まで進展した症例に対して,速やかかつ積極的な高気圧酸素治療(hyperbaric oxygenation, HBO)の併用により,良好な経過が得られたので報告する。症例は65歳,男性。自宅で倒れているところを発見され,当救命救急センターに搬送となった。呼吸循環動態は安定していたが,左眼窩周囲から顔面・頸部にかけて悪臭を伴う著明な腫脹と発赤,口腔内からの排膿を認めた。頸部CTでは,上顎から頸部にかけて隔壁を形成した広範囲な膿瘍が気道を圧迫し,深部まで進展していた。このため,緊急ドレナージおよび気管切開を施行,術後は集学的治療を行った。外科的治療が十分施行できなかったことや嫌気性菌への対策として,HBOを第4病日より14日間施行した。第11病日には全身・局所とも状態改善し,一般病棟へ転棟,第44病日には転院となった。ドレナージが十分にできない症例や,嫌気性菌感染が疑われる症例に対し,速やかなHBOの併用は有効であると思われた。
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