日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
溺水に対する短時間のバイスタンダーcardiopulmonary resuscitation(CPR)により胃破裂をきたした1例
高橋 哲也武居 哲洋藤澤 美智子伊藤 敏孝八木 啓一
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2012 年 19 巻 2 号 p. 225-229

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抄録

症例は39歳,男性。飲酒飲食直後のプールでの溺水による心肺停止に,口対口人工呼吸を含む約2分間のバイスタンダーcardiopulmonary resuscitation(CPR)が施行され,現場で自己心拍が再開した。当院搬送時に腹部膨満,吐血,胃内容物誤嚥による気管閉塞を認めた。胸部CTで両側肺野に散在性の網状・小粒状陰影とすりガラス状陰影を,腹部CTで緊満した胃と大量の腹腔内遊離ガス像を認めた。CPRに伴う上部消化管穿孔と診断し,緊急開腹術を施行した。腹部食道の右前壁から胃小弯側に約7 cmの裂傷が縦走していたため,縫合閉鎖した。術後はacute respiratory distress syndrome(ARDS)の呼吸管理に難渋したが,第9病日に人工呼吸器から離脱し,第30病日に神経学的後遺症を残さず退院した。びまん性肺傷害による肺コンプライアンス低下や気管閉塞による気道抵抗増加が人工呼吸による胃への送気を促し,飲食後の胃拡張状態と相まって短時間のCPRにもかかわらず胃破裂を誘発したと考えられた。

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© 2012 日本集中治療医学会
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