抄録
周産期心筋症(peripartum cardiomyopathy, PPCM)は,心疾患既往がない女性が周産期に突然発症し,母体死亡にもつながる重篤な疾患である。症例は1回経妊0回経産の40歳。妊娠高血圧症候群による帝王切開術が施行され,術後経過順調であった。術後8日目に呼吸困難,SpO2 60%(room air)となり,気管挿管された。胸部X線写真で両側浸潤影,経胸壁心エコーで左室駆出率25%であり,周産期心筋症による急性肺水腫と診断した。カルペリチド,ドブタミン投与後に左室収縮機能が改善し,ICU入室後3日目に抜管し,4日目に退室した。正常妊婦でも息切れなどを訴えることがあるため,PPCMの早期診断を困難にするが,本症例は迅速な集中治療管理がなされ,良好な転帰をもたらすことができた。