抄録
症例は31歳,男性。毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome, TSS)疑診にて治療抵抗性の低血圧および乏尿を呈し,ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(polymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion, PMX-DHP)を施行した。開始から約2時間後,突然のST上昇と胸痛が出現し,心筋マーカーの上昇も確認された。しかし心臓超音波検査では明らかな局所壁運動異常は認められず,冠動脈造影でも有意狭窄は認められなかった。その後,心電図変化は軽減し正常化した。全身状態も改善し,10日後に生存退院となった。ST変化や胸痛の原因機序として,ブドウ球菌の外毒素により産生されるエイコサノイドが引き起こす冠微小循環障害,および敗血症性心機能障害などが考えられた。