2012 年 19 巻 4 号 p. 638-643
合併症のICU管理や手術を要するClostridium difficile(CD)感染症(CD infection, CDI)は劇症型CDIと呼ばれ,死亡率が高く,結腸亜全摘が推奨されるが,術後死亡率も高く,手術適応や時機,術式が問題である。69歳男性が中毒性巨大結腸症を呈した劇症型CDIを罹病し,敗血症性ショックと高腹腔内圧により多臓器不全を呈した。外腸瘻造設による減圧で一旦は外科治療奏功の指標とされるlactate(Lac)5 mmol/l未満に低下したが,すぐに再増悪した。再手術では右半結腸切除に加え,大量小腸切除も要した。医療関連感染または残存結腸からのバクテリアルトランスロケーションやCDI再燃による重症敗血症,短腸症候群による肝不全などが原因と考えられる多臓器不全により,術後45日に死亡した。劇症型CDIへの外科治療は,結腸亜全摘の時機を逸さないことが重要である。