日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
出血性胃潰瘍と脳炎を合併した重症ツツガ虫病の1例
畠山 淳司中野 実高橋 栄治鈴木 裕之蓮池 俊和仲村 佳彦針谷 康夫大西 一徳
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2012 年 19 巻 4 号 p. 644-649

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抄録
ツツガ虫病はダニが媒介するリケッチア感染症であり,稀に重症化する。症例は64歳,女性。入院9日前にキノコ狩りに出かけた後に頭痛と39℃台の発熱を認めた。その後,意識障害と呼吸不全も発症し,他院から転院となった。敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群,急性呼吸窮迫症候群を伴う多臓器不全の状態であり,ICUに入室した。経過中2度にわたり出血性胃潰瘍から出血性ショックとなり,内視鏡下緊急止血術を要した。病歴と特徴的な皮疹からツツガ虫病を疑い,ミノサイクリンを投与したところ,全身状態は改善した。第10病日以降も認知機能低下と性格変化が持続し,髄液蛋白の増加も認めたため,ツツガ虫病による脳炎と診断した。第27病日に脳炎は改善し退院した。ツツガ虫病の主な病態は血管内皮細胞障害による血管炎と考えられており,多臓器不全のみならず,今回見られた多発胃粘膜障害と脳炎も血管炎に伴う病態であった可能性が考えられた。
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© 2012 日本集中治療医学会
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