抄録
成人の急性壊死性脳症にて劇的な転機を辿った症例を経験した。症例は既往の無い24歳男性。発熱,意識障害およびショックの精査・加療目的に搬送された。入院当日より肝機能障害,腎不全,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation, DIC)が急速に進行し,集学的治療を開始したが入室2日目に大後頭孔ヘルニアを発症した。脳CTで急性壊死性脳症に特徴的な脳幹,両側小脳,視床にlow density areaを認めた。脳低体温療法,ステロイドパルス療法,マンニトール投与等を行ったが,ICU入室4日目には脳波が平坦化し,ICU入室14日目に高カリウム血症による心室性不整脈で死亡した。成人の急性壊死性脳症では多臓器不全が急速に進行する場合もあり,留意する必要がある。