抄録
症例は,54歳,男性。1型糖尿病,慢性腎不全で腹膜透析を導入していた。入院当日,自宅前で倒れているところを発見され,当院に救急搬送となった。来院時は軽度の意識障害があり,血液検査上,血糖値1,452 mg/dl,血清Na濃度 107 mmol/lと高血糖,低Na血症があり,代謝性アシドーシスと炎症反応マーカーの上昇を認めたことから,感染を伴う糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis, DKA)と診断し,全身管理目的でICU入室となった。透析中の無尿症例であるため,一般的な初期治療として推奨される輸液負荷は危険と考え,心臓前負荷の評価を行い,維持輸液量で治療を開始した。また,1時間毎に血液ガス分析で,電解質,血糖値を測定し,緩徐に電解質,血糖値の是正を行い,第3病日から血液透析に移行した。慢性腎不全患者のDKAに対し,初期治療の結果を頻回に評価して電解質および血糖値を緩徐に補正することで,神経学的合併症なく軽快退院できた。