2013 年 20 巻 2 号 p. 247-252
アルコール性肝硬変をもつ78歳男性。搬送2日前に左大腿部を虫に刺され,同部位の紫斑と意識障害のため救急搬送となった。左大腿部の紫斑は拡大傾向であったが,搬送直後と4時間後のCTでは外科的介入の適応にはないと判断された。しかしその後も紫斑,ショック状態が悪化したため搬送9時間後に3度目のCTを施行したところ,筋膜から筋層内にかけて著明なガス所見を認めたため局所のdebridementを施行し,術後も集学的治療を継続したが,搬送から約28時間後に死亡した。血液培養,術中浸出液からCTX-M-8 like遺伝子を有するextended spectrum β-lactamase(ESBL)産生大腸菌を検出したため,ESBL産生大腸菌による左大腿部の壊死性軟部組織感染症と診断した。致死的疾患である壊死性軟部組織感染症の起炎菌として,ESBL産生菌のような高度薬剤耐性菌もありうることに注意する必要がある。