抄録
人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia, VAP)は,人工呼吸器装着患者で高頻度に発症する院内感染症である。本研究はVAP発症に影響すると考えられる因子のうち,体位変換がVAP発症を減らすという仮説を検証した。2008年1月から2010年9月の昭和大学病院救急センター病棟入院患者を対象に後方視的観察研究を行った。その結果,最終対象者は111例であった。VAP発症群は32例(28.8%)であり,非発症群に比べ輸血総量が多く,輸血,経腸栄養,筋弛緩薬持続投与の実施患者の割合が高い傾向にあった。多重ロジスティック回帰分析から,人工呼吸器装着期間の延長はVAP発症を増やし,気管挿管から24時間以内の体位変換回数の増加はVAP発症に影響するとは言えなかった。本研究の結果から,気管挿管から24時間以内の体位変換回数の増加はVAPに対する予防効果を認めなかった。