日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
心嚢液,胸水貯留を伴う膵液瘻に対しソマトスタチンアナログが有効であった1症例
二木 貴弘山口 俊一郎原田 浩輝内野 えりか上野 剛濱崎 順一郎有村 敏明
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 21 巻 6 号 p. 639-643

詳細
抄録
症例は77歳,男性。既往歴にアルコール性慢性膵炎,肝硬変があった。上腹部痛,食欲不振を主訴に近医受診し慢性膵炎の急性増悪の診断にて紹介入院となった。入院時,急性膵炎の重症判定基準(2008年)予後因子2点,造影CT grade 1であったため急性膵炎として治療を開始した。5病日目,胸腹水貯留により呼吸状態が悪化したためICU入室となった。心エコー検査にて大量の心嚢液貯留を確認した。心嚢液・胸水中よりamylase(Amy)異常高値を認めたため膵液瘻を疑い,ICU入室12日目よりソマトスタチンアナログ持続皮下投与を開始した。投与1週間後から炎症反応は改善,心嚢液・胸水が減少し全身状態も落ち着いた。本症例は,胸腹水貯留の原因究明に難渋したが,ソマトスタチンアナログ投与によりAmyの低下を認めたことから膵液瘻による心嚢液貯留と考えた。ソマトスタチンアナログは術後膵液瘻に対し用いられることがあるが,慢性膵炎に伴う瘻孔の閉鎖にも有効であった。
著者関連情報
© 2014 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top