日本集中治療医学会雑誌
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21 巻, 6 号
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今号のハイライト
総説
  • 寺尾 嘉彰
    2014 年 21 巻 6 号 p. 595-600
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    尿中微量アルブミンは糖尿病性腎症の早期発見の指標として,また,微量アルブミン尿は糖尿病患者や一般の母集団において心血管イベントの危険因子として確立されている。集中治療領域でも種々の検討が行われている。敗血症ではプロカルシトニンやCRPと同様に感染症のバイオマーカーであり,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation IIスコアやSequential Organ Failure Assessmentスコアと同程度に予後を予測する。術後は手術侵襲によって尿中微量アルブミンは増加するが,急速に正常化する。熱傷では増加するが,その上昇は測定時期と重症度による。重症脳血管障害でも増加し,血管透過性が亢進していることが示唆される。ICUでの急性腎傷害発生を推定糸球体濾過率よりも,正確に予測する。これらの集中治療領域の検討は単施設,小規模研究によっており,さらなる検討が必要である。
原著
  • 森沢 知之, 湯口 聡, 大浦 啓輔, 上坂 建太, 加藤 倫卓, 齊藤 正和, 櫻田 弘治, 澁川 武志, 田原 将之, 花房 祐輔, 高 ...
    2014 年 21 巻 6 号 p. 601-606
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    【目的】Coronary artery bypass grafting(CABG)術後リハビリテーション(リハビリ)の遅延割合および遅延に関わる因子を明らかにする。【方法】対象は全国8ヵ所で待機的にCABGを受け,術後に標準的なリハビリを受けた529例。術後8日以内に歩行が自立した順調例と9日以上を要した遅延例に分類し,遅延に最も関係の深いと思われる要因を7つのカテゴリーから選択した。また患者基本情報,術前検査値,手術情報を収集し,遅延に関わる要因を検討した。【結果と考察】術後リハビリ遅延の割合は10.4%で,遅延理由は「心臓由来」が最も多かった。ロジスティック解析の結果,遅延因子として運動器疾患の既往,術前Cr,estimated glomerular filtration rate(eGFR)などが抽出された。【まとめ】運動器疾患の既往や術前からの腎機能障害は術後リハビリが遅延する。
  • 萬 知子, 森山 潔, 本保 晃, 小谷 真理子, 鵜澤 康二, 神山 智幾
    2014 年 21 巻 6 号 p. 607-613
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    【目的】非再呼吸式リザーバーマスク(以下,RM)の装着具合と酸素流量がFIO2に及ぼす影響を高機能患者シミュレータを用いて調べた。【方法】高機能患者シミュレータ(分時換気量9.8 l/minの成人男性モデル)にRMを緩め・通常・密着の3通りで装着し,酸素流量6,8,10,12,15 l/minにおけるpartial pressure of alveolar oxygen(PAO2),FIO2,吸気中の空気混入率を求めた。【結果】酸素流量15 l/minのFIO2は,緩め装着で0.64,通常で0.85,密着で0.90だった。密着時の吸気への空気混入率は,上述酸素流量で,それぞれ52,39,30,22,13%,FIO2は0.59,0.69,0.76,0.83,0.90だった。【結論】RM密着時は予想に近いFIO2が得られるが,酸素流量が少ないとFIO2が低下し吸気抵抗が増大する。緩め装着ではFIO2の低下が著しい。いずれにしてもRMは酸素流量を下げるべきではないと示唆された。
  • 櫻井 聖大, 山田 周, 北田 真己, 橋本 聡, 橋本 章子, 木村 文彦, 原田 正公, 高橋 毅
    2014 年 21 巻 6 号 p. 614-622
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    【背景】敗血症性播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation, DIC)のprotein C(PC)活性と予後の関連を検討した。【方法】2008年10月から2011年1月の単施設での後方視的検討。敗血症性DIC 50例と,その中でDICを離脱した42例を対象とした。重症度,臓器障害,凝固線溶系因子と予後の関係をreceiver operating characteristic曲線を用いて検討した。【結果】敗血症性DIC症例とDIC離脱症例の予後と関連する因子は,DIC診断時のantithrombin(AT)値とPC値で,生存に対するcut-off値はAT≧50.2%,PC≧39.9%だった。陰性反応適中度と感度はATが,陽性反応適中度と特異度はPCが高かった。【結論】敗血症性DICの予後予測には,AT値と同様にPC値も有用である。
  • 細見 早苗, 林下 浩士
    2014 年 21 巻 6 号 p. 623-629
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    【目的】外科的介入を行った敗血症性disseminated intravascular coagulation(DIC)における遺伝子組み換え型ヒト可溶性トロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin, rTM)併用投与の効果を検討した。【方法】重症敗血症で集中治療管理を要したもののうち,外科的処置で感染巣をコントロールした症例を対象とした。従来のアンチトロンビン(antithrombin, AT)のみで治療したAT群と,rTMを併用投与したAT+rTM群に分け,治療開始7日目までの臓器障害,凝血学的指標などの継時変化および治療転帰を後ろ向きに比較検討した。【結果】AT群で第1日目にAT活性値が低かったが,第3・5・7病日のDIC score,Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)score・P/F比,血小板数・FDP値・AT活性値に有意差がなかった。両群の60日生存率は100%であり,集中治療管理・人工呼吸器・透析管理日数も差がなかった。【結語】敗血症性DICの治療の原則は感染巣の治療である。外科的介入で感染巣をコントロールが可能な場合,ATとrTMの併用療法に明らかな必要性は認めなかった。
症例報告
  • 嶽間澤 昌泰, 山崎 治幸, 六車 崇
    2014 年 21 巻 6 号 p. 631-634
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    内頸静脈からの中心静脈カテーテル確保時に,椎骨動脈の誤穿刺を起こした2症例を経験したので報告する。症例1は,腸管出血性大腸菌O-111による溶血性尿毒症症候群を発症した2歳女児。椎骨動脈を経由し左心室へ留置された透析用カテーテルをX線,CTで確認した。その後,動静脈瘻の合併を認め,経皮的塞栓術を必要とした。症例2は,大動脈パッチ拡大術を施行した大動脈弁上狭窄の14歳男児。麻酔導入時に挿入した中心静脈カテーテルの左心室への迷入をX線検査で確認した。人工心肺下で手術は施行し,術後カテーテルを抜去したが動静脈瘻形成は生じなかった。椎骨動脈誤穿刺は重大な合併症を起こす可能性がある。椎骨動脈誤穿刺を防ぐため,超音波ガイド下で内頸静脈背側の椎骨動脈を同定し,後壁貫通を避けた穿刺が必要である。また医療安全を保つために,教育法の改善による穿刺技術の向上が望まれる。
  • 櫻井 聖大, 山田 周, 北田 真己, 橋本 聡, 橋本 章子, 木村 文彦, 原田 正公, 高橋 毅
    2014 年 21 巻 6 号 p. 635-638
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    臭化ジスチグミン(ウブレチド®,鳥居薬品)は排尿困難に使用されるコリンエステラーゼ阻害薬である。重篤な副作用としてコリン作動性クリーゼを起こすことが報告され,その使用量は制限されるようになった。ただ,その後もコリン作動性クリーゼの報告は散見される。我々は,重症肺炎とそれに伴う麻痺性イレウスからショックに至った症例を経験した。当初は敗血症性ショックを疑ったが,臭化ジスチグミンを内服していたことと,コリンエステラーゼ活性の著明な低下を伴っていたことから,コリン作動性クリーゼによるショックが考えられた。臭化ジスチグミンはその大半が便中に排泄されることから,麻痺性イレウスのように消化管蠕動が低下している場合には血中濃度が上昇し,コリン作動性クリーゼを起こす可能性があり注意が必要と思われた。
  • 二木 貴弘, 山口 俊一郎, 原田 浩輝, 内野 えりか, 上野 剛, 濱崎 順一郎, 有村 敏明
    2014 年 21 巻 6 号 p. 639-643
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性。既往歴にアルコール性慢性膵炎,肝硬変があった。上腹部痛,食欲不振を主訴に近医受診し慢性膵炎の急性増悪の診断にて紹介入院となった。入院時,急性膵炎の重症判定基準(2008年)予後因子2点,造影CT grade 1であったため急性膵炎として治療を開始した。5病日目,胸腹水貯留により呼吸状態が悪化したためICU入室となった。心エコー検査にて大量の心嚢液貯留を確認した。心嚢液・胸水中よりamylase(Amy)異常高値を認めたため膵液瘻を疑い,ICU入室12日目よりソマトスタチンアナログ持続皮下投与を開始した。投与1週間後から炎症反応は改善,心嚢液・胸水が減少し全身状態も落ち着いた。本症例は,胸腹水貯留の原因究明に難渋したが,ソマトスタチンアナログ投与によりAmyの低下を認めたことから膵液瘻による心嚢液貯留と考えた。ソマトスタチンアナログは術後膵液瘻に対し用いられることがあるが,慢性膵炎に伴う瘻孔の閉鎖にも有効であった。
  • 五木田 昌士, 清水 敬樹, 佐藤 啓太, 早瀬 直樹, 早川 桂, 勅使河原 勝伸, 田口 茂正, 清田 和也
    2014 年 21 巻 6 号 p. 644-648
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    【目的】今回我々は当救命救急センター(当センター)における過去8年の縊頸症例について検討した。【方法】2003年1月から2011年6月まで当センターに搬送された縊頸203例を対象とし,診療録をもとに遡及的に行った。【結果】縊頸症例203例のうち救急隊現場到着時に心肺停止であった症例が154例あり,その全ての転帰が死亡であった。また上半期と下半期の比較ではbystander cardiopulmonary resuscitation(CPR)は下半期で有意に多くなっていたが転帰の改善は得られなかった。また予後予測因子は従来と同様Glasgow coma scale(GCS)3や心肺停止があげられた。【結論】従来の報告と同様に縊頸において現着時心肺停止の症例は予後が極めて悪い。
  • 下新原 直子, 小尾口 邦彦, 福井 道彦, 藤原 大輔, 加藤 之紀, 渡邊 宏樹, 浜崎 幹久, 木股 正樹
    2014 年 21 巻 6 号 p. 649-653
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    妊娠中は生理的に深部静脈血栓を起こしやすい状況にある。本症例では緊急帝王切開術中に巨大肺塞栓症を発症し心停止をきたしたが,経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)により蘇生し,PCPS下にカテーテル血栓破砕・吸引術を行った。PCPS稼働のためヘパリン持続投与を行っていたが,大量気道出血・腹腔内出血などを合併したため,活性化全血凝固時間(activating clotting time, ACT)を低めに管理することで出血をコントロールし,PCPSからの離脱に成功した。さらに,ヘパリン起因性血小板減少症を合併したが,早期にアルガトロバンに変更したことにより最終的には後遺症なく社会復帰することができた。
短報
委員会報告
  • 日本集中治療医学会看護部会安全管理小委員会
    2014 年 21 巻 6 号 p. 663-668
    発行日: 2014/11/01
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    2000年4月に施行された介護保険法で身体抑制が原則禁止された。さらに2000年5月には厚生労働大臣が縛らない看護・介護を全面に打ち立てた「身体拘束ゼロ作戦」の推進を表明した。しかし,クリティカルな場面では生命を維持するためにやむを得ず身体拘束を行っている現実があった。そこで,日本集中治療医学会看護部会安全管理小委員会では,全国のICUにおける身体拘束の実情や問題点を明らかにし,ICUにおける身体拘束のガイドライン作成が必要であると考えた。2007年に全国のICUを有する病院1,188施設を対象に「全国ICU看護および身体拘束(抑制)実態調査」を行った。2008年に調査結果の集計・分析を行い,2009年4月に日本集中治療医学会看護部会ホームページに調査結果を掲載した。また,調査結果の分析内容から「ICUにおける身体拘束(抑制)のガイドライン」を作成し,2010年に日本集中治療医学会看護部会ホームページに掲載したので,その経緯を報告する。
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