抄録
カルバマゼピンが原因と考えられる薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome, DIHS)から急性肝不全となった症例を経験した。72歳の女性で,入院6週前に三叉神経痛に対してカルバマゼピンを投与された。入院1週前より皮疹が出現,さらに発熱,肝障害もあり入院前日にカルバマゼピンの投与を中止し,当院紹介受診となった。入院後よりプレドニゾロンで治療するも肝障害が進行し,急性肝不全となりICUに入室した。ICUにてステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1 g/day,3日間)や血漿交換を行うも肝機能の改善はなく,カテーテル関連血流感染症により第31病日に死亡となった。本症例ではヒトヘルペスウイルス6の再活性化を示す免疫グロブリンG抗体価上昇の条件は満たさなかったが,診断基準にある他の主要所見は満たしたことから非典型DIHSと考えられた。DIHSの死因は肝不全が最も多く,肝障害の進行を抑えるため,早期診断と原因薬剤の中止が重要である。